世界を変える、自分を変える、国際ボランティア
    新しい一歩を踏み出す勇気
▲アフリカの大地の上に、イスラム教のアラビックな空気と植民地時代からのフランスの影響が混ざり合う不思議な町・ジブチ市の活気溢れる市場
  日本にいても海外にいても人との出逢いというのはかけがえのない財産となります。今回は私がジブチに来てから出逢った素晴らしい人たちを紹介したいと思います。
■悲しみや絶望を乗り越えて
▲家族と一緒に暮らせる事を目指して熱心に勉強するHIBOさん
  隣の国ソマリアからきた難民の少女HIBO17歳。彼女は難民キャンプではなくジブチの首都に一人で暮らしています。彼女との出逢いは日本語を勉強したいと 私のオフィスへ訪ねてきた事から始まりました。今まで彼女がどんな人生を歩んできたのか、将来どうなりたいのか、その為に今何が自分に必要なのかを流暢な英語で 話してくれました。『小学生の頃戦争により父を亡くし、家族は行方知れずに。近所のおばさんと一緒にジブチにやってきた。しばらくしておばさんが亡くなり、 一人になった。警察の目を気にしながら、道端で寝泊りする日々が続き、ある日ジブチ人女性が彼女を家に引き取った。ようやくご飯や寝る事を心配しなくても良いと思ったら、 数ヶ月して家を追い出され、又一人で生活、モスクに寝泊りしている』『いつかアメリカに渡って仕事で成功して家を持ち、ソマリアにいるはずの家族と一緒に暮らしたい。 その為に5つの言語とパソコンの勉強をしたい』と語ります。彼女は今、無料の語学教室を見つけて熱心に勉強をして、自分の道を切り拓く努力をしています。

■仕事を通して希望が
▲障害をもった難民の方たちのプロジェクトに予定されている手作りペン
 二人目は隣国のエチオピアからきたMORID。彼は難民認定されていませんが、国にも帰れずに数年ジブチに住んでいます。同僚が手工芸技術を持っている 彼を私のプロジェクトに紹介してくれました。採用が決まるまで個人的にペンの作成を依頼する事にしました。1本500ジブチフラン(約250円)のペンを半日から 丸一日かけて作ってくれます。彼は『仕事をして、そのお金でお店に行って欲しいものを買う事ができる。これが人生だ。毎日する事もなく道で寝ていると自国の事や 家族の事、今後どうしたらいいのかばかり考えて気が変になりそうで夜も寝られない。何かする事があるという事は本当にありがたい』と言っていました。 彼が本国に帰れない理由は、冤罪でスパイに間違われて捕まった為、帰ると身の危険があるからです。本来であればそんな理不尽な対応を受け、人生を狂わされて怒りや憎しみ につながるものですが、いつも彼から出てくるのは慎み深さや優しさです。来年度の活動計画には、障害をもった都市難民を対象に彼のペン作成講座が決まりそうです。

■しっかり自分を見つめて
 この世界には難しい事も悲しい事も多いと思います。でもしっかり自分を見つめて、新しい一歩を踏み出す勇気をもっている人たちがいる事を教えられました。 私もジブチでの生活が行き詰まる事もあります。そんな時自分を取り戻させてくれるのも彼らです。この文章を読んで下さった皆様が素敵な人生を送られる事を願っております。
●平野愛美さんは青年海外協力隊員の村落開発普及員として、2009年9月からアフリカのジブチという国で現地の人々と生活を共にしながら、 ボランティア活動に従事しています。派遣期間は2年間です。難しい局面と向き合う事もあるでしょうが、連載で現地の様子を伝えてもらい、 日本の若者への元気メッセージにもなればと願っております。



掲載:2011/1/23

BACK